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片目の森

片目を閉じると、森が見える。

昼休みの買い出し中も、立ち止まったときは片目を閉じて、瞼の裏に映るその森を見る。

半分見えている森と、私のいる町は重なる。
透過した木漏れ日は、町のアスファルト上で揺れて見えるし、交差点の真ん中には、白い花が咲き誇っている。

交差点の途中で立ち止まって、花を手折る。
両方の目を開けると、遮るもののない夏の日差し。
自転車が肩をかすめ、点滅する信号と駆け足の、つまり現実の町が戻ってくる。

道を渡り終えた私は、ショーウィンドーのガラスに映る。
交差点の途中で手折ったあっちの花を持ち、そこに映っている。

片目を閉じて森を重ね、私は二つを行き来する。
急な雨の時は、森のほうで雨宿りして、たいして濡れずにやり過ごしたりもする。

いったい、どちらに所属しているのだろう。
目を開ければ、ただの町。
高架橋に、オフィスビル。
ビルの谷間に残った祖父母の菩提寺が、今も変わらず昼の鐘を鳴らしている。