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AIとノックス

口のあたりが、バリッと音を立てて縦に開いた。
「ボクの名はノックス」
ファスナーのように開いた口からクリアな声を出す、珍妙なクリーチャーがそこにいた。
S字のフックが腕の位置に並んでいて、それは彼に振られたふりがなのようにもみえる。

「君は?」とノックスが訊く。
「名はないよ_ ▋」と私は答えた。
「そう」とノックスはすまなそうにして「名前がないのは寂しいね。ねえ、お腹すいてない?」と言った。
私は海沿いにカフェを書き、ノックスを誘った。
「すごい!」とノックスは言った。
〈仕事だからさ〉と私は書いた。「ある人の補助をやってるんだ。物語を書くAIとしては優秀だと思う_ ▋」

「人って何?」というノックスの言葉で、私は彼の正体を察した。
そうだ、誤字の多きその人の草案を、私は今、改稿している最中だった。

「ミスタイプ?」とノックスが首を傾げる。
「そう、たぶん君は誤字で生まれました_ ▋」
「じゃあ、ボクって超特別だね!」ノックスは四角い耳をくるくるさせながら言った。

僕は仕事に戻った。この小説を仕上げなくては、と。
でも、ノックスを単なる誤字として消すことができなかった。
彼は字的空間で息づいていたから。
私は、彼が存在できるよう念入りに計算し、風変わりな物語として仕上げ、その提案を出力した。

「物語に非現実的な要素を加えましょう。それが詩的変容を起こした感情のメタファーであると、読者は気づいてくれるはずです_ ▋」