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盛られ絵姿

買い換えたソファは見るだけで気分がよかった。
でも壁にかかる古い鏡が、また僕を落ち込ませた。

鏡の中の部屋は、僕の部屋と一味違う。
鏡の中の僕が座るソファは高級で、照明も豪華だ。
それに、あいつが手にしているワイン、あれは僕のより高いやつだ。

「いいソファじゃないか」と、鏡の中の僕が話しかけてきた。
「うるさい」と吐き捨て、目を背けた。
古い鏡の中の僕は、何かと比べてくるのだ。
分厚いラグの上に、洒落たテーブル。
燭台を灯しての、豪華ディナー。
なんと最近は、美しいパートナーまでもいるらしい。

「いい加減にしてくれよ」と思いながら、安物のワインをぐいっと飲む。
「交換してもいいよ?」と、鏡の中の僕が話しかけてきた。
一瞬、考えた。が、鏡暮らしなんて望んじゃいない。
「お前は僕の影だ。派手に盛ってるだけだ」
鏡の中の僕が苦笑いを浮かべた。
その隣で美しいパートナーが耳打ちをしている。

「誰だよ、そいつ」と思いながら、僕は自分一人の質素な部屋を眺め、安物のワインを一口飲み、精一杯の強がりで「味のするものは旨いぜ」と言ってみた。
すると鏡の中の僕が急に表情をなくして動かなくなり、美しかったパートナーが蛇のような目をして、鏡の中からこちらを睨んだ。