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背に何か障る。
そうだあの絨毯が安物で、床板が背中に触れるのだ。
開けた窓を通じ、部屋は夏空と接続されている。
昼寝中の恋人の体温を近く感じ、皮膚呼吸について考える。
恋人が眠ったまま「夢」とつぶやき「続きを見る」と言い残して行ってしまう。

ああ、弦のないギターが置かれている。
窓の庇の風鈴の、その色がうまく思い出せない。
夏の空の色が、あまりに鮮烈な記憶であるせいだ。

私は風鈴に手を伸ばす。
伸ばした手が空を切る。
今は一月、冬の窓。
毛布から出した手は、冷たくカサついて酷い皺。
「続きを見る」と言い残した恋人をまね、今だけこの場を離れたい。
椅子の背もたれが骨に当たっている。