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コロッケ花火とハッピー拳銃

嵐が去って、ぴかぴかの外へ出た。
白いシャツを選び、カメラを入れたポーチを提げて、雲を羽織るように 身軽なスタイル。
私とすれ違う 風が襟をちょっと直してくれた。

角にある清水屋さんの前に差し掛かると、
今し方揚がったばかりのコロッケが 銀色トレーに並び、
「野菜コロッケ 四十五円」と 手書きの札が添えられたところで
「一個ください」 そう声をかけたら、
店のおばちゃん、OKサインを 直線的な軌道で突き出し、
「おいしさ、注意」なんていいながら、ちいさな包みで渡してくれた。

ころもサクサク揚げたてコロッケを手に、私は気分よく歩いて行く。
歩きながら コロッケを口に運ぶ。
一口目に、パリっ という音が立った。
次に 口の中で ふっ と蒸気が膨らんだあと、
トウモロコシの実が ぷつん と音を立てる。
あんまり大きな音だったので、道行く人たちが振り返った。

私はちょっと驚いて 食べるのをやめ、周りを見回した。
道行く人たちは またいつものように歩き出した。
もう一口 食べてみた。
今度はグリーン・ピースが ばちん。
角切りキャロットは、ころころと 木琴のような音を立てた。
すぐあとを追うように、サクサクころもがついてきて、
口の中で バチバチバチッ と細かく鳴るから、
これは もう、まるで花火。

コロッケ花火。音を立てて 口の中に弾ける。
私は楽しくて、どうにもこのことを隠せない。
歩きながら 三口目、いってしまう。
コロッケ花火。音を聞きつけた犬がぴんと立ち、尻尾をくるくる回す。
公園で遊んでいた子供たちが、ぴたっと動きを止めたあと、
お祭りのような歓声を上げ、お神輿でも追うように 私のあとをついてきた。
コロッケ花火を振りまきながら、気分のいい私はどんどん歩いていった。

「待ちなさい」
と、息を切らした警察官が、あとを追いかけてきて、
「君、あんまりハッピーだと危険を伴う」と私に告げた。
気分のよかった私は、
いつもよりもずっと、そう、ずっと たくさん、ムッとした。

警官は、私の提げているポーチを指さし、
「それに、だ。君の持っているものは何だ」と聞くので、
「これはカメラです。ほら───」
といいながら、提げたポーチの中から中身を抜き出し、
警官に向けて構えてみせた。

まったくの同時だった。
警官が、懐から黒い塊を引き抜いて私に向け、
躊躇なく、そのトリガーを作動させた。

「カシャン」

反射的に閉じてしまった目を、私はおそるおそる開けてみた。
警察官が引き抜いたものは、見覚えのある私のカメラだった。
私が手にしていたもののほうが、黒光りする拳銃だった。

警察官は私の横に立ち、上から手で包むようにして 銃口を下ろさせた。
「こういうことは、ちょくちょく起こっていてね」
そうして警察官は、私から取り上げた拳銃を 自分のホルダーに収め、
「君自身のハッピーで、誰かを撃ったりしないように」
そう言いながら、留め具をしっかりと確認した。
「……何だって弾丸になり得るのだ」

引き換えに、カメラが私の手に戻された。
戻されたカメラを確認すると、液晶画面に 私が写っていて、
私は 黒い拳銃を構えて立っていた。
構えた拳銃の銃口では、
あまりに良過ぎた気分の弾丸が、いまにも飛び出しそうな勢いで
顔をのぞかせていた。