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喝采とその舞台

暗い路地の先は、ゴミの山に塞がれていた。

真ん中で開いたスケッチブックが置いてあり〈ここはどこだ〉と書かれている。
拾い上げようとして近づくと、強烈なスポットライトが当たり、「そこまでだ」という大声がかかった。
驚き、よろけてゴミの中に足を突っ込み、向こうにあった金網に指を三本ひっかけて、姿勢を保ち、自分は「ここはどこだ!」と叫んだ。
すると、まばゆい照明の向こうで、わっと歓声が起こった。

足を引き抜くと、ゴミ山は何の重さもなく崩れ、湿気も臭いも感じない。
自分には、これらは舞台の小道具なのではないかと思われた。
屋上の照明も、もしかしたらステージに吊られた灯体なのかもしれない。
でも、どうして自分がこんなことになっているのか、分からなかった。

「あんたらは何だ!」
照明に照らされながら思いっきり叫ぶと、暗闇で喝采が起こった。
暗がりに何があるのかわからないが、自分が発する言葉も、混乱も、ここでは名演となってしまうようだ。
よろめきながら引き返し、さらに大きくなる拍手から逃れて、夜の大通りへ戻った。

煤けた通りは、いつもの見慣れた町だった。
自分も汚れた作業着で、何も変わらぬ自分だったが、ただ、覚えのない銀貨を数枚、握りしめていることに気づいていた。