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昼は二月にいる

公園のベンチに去年のカレンダーが置かれている。折れた12月とめくれた7月が並んで座り、午後のティータイムを楽しんでいる。

今日、つまりこの火曜日が、金曜日に宛てた恋文を書いてほしいと頼んでいる。
代筆を依頼された気分の君は、パンをかじりながら文面を考えはじめた。
週はまだ始まったばかりだというのに。
大時計の中は空っぽで、針を回す理由を忘れてしまった。それに電車も今日は遅れているらしい。
ポケットから「ねむい」がこぼれ落ち、道端でうとうとしている。

空は、日の角度が変わったせいで、色を変えつつある。
まだこんなにも低い気温だというのに、太陽が、一本春に近い軌道を通っているから、一歩青空の青が濃さを増している。

靴下が一足、枯れ木に登って、空を掴む練習をしている。
根元では、雲が影になって休憩をしている。ちぎられたパンの上で、「明日は雨かな?」なんて、その雲行きを心配しながら。

地面に落ちている新聞を鳩が読んでいた。体よりも大きな見出しは「平和問題を解決」。鳩は「ほー、ほー」と唸りながら首をかしげる。

今、昼は二月にいる。

出番を待つ夕焼けが思い出される。きのうが、どんな色だったかについて。
今日は、違う色に染まるだろう。
色は少しずつ変わっている。
公園のベンチ。カレンダーも、靴下も、君と休んでいる文字たちもみんな、みんなそうだ。

今日も、みんなが、そうなる。